

おすすめ絵本
「なつのいちにち」
はたこうしろう・作
いってきまーす。
あつい あつい なつのひ。
きょうは ひとり。おにいちゃんも いない。……
夏をイメージする時、何を思い浮かべますか?
海、青い空に入道雲、草のしげみにたくさんの虫、そしてクワガタ!
まさに「これぞ夏」というものが描かれています。
物語は、少年がたった一人で虫取りに行く一日を描いている、非常にシンプルなもの。
文章も簡潔で短い言葉が書かれているだけだけれど、その分、ダイナミックな構図で描かれた風
景が圧倒的な迫力をもって、まさに夏の日に浸らせてくれる。
真っ暗な家の中を飛び出すと、いきなり外は明るく、くっきりと鮮やかな世界。
空は青いし雲は大きくて真っ白。
駆けて浮き上がった少年の体の下には真っ黒な影が伸びている、強い日差し。
そんな夏の風景だけでなく、海の潮風、牛小屋のくさーい臭い、神社の石段を上った時の、息切れ
と、流した汗と、疲れきって重くなった足の感覚、岩場で移動する時にばねがついたみたいに岩を
蹴った足の感覚、そして川のせせらぎで一休みした爽快感。
頭が思い出すのではなく、体全体が、子供の頃に置き忘れたあの感覚をまざまざと蘇らせます。
そして、何度挑戦しても、取れない、手が届かない木の幹のクワガタ。
でも、諦めない、へこたれない、木によじ登り何度だって繰り返す。
どんなに時間が過ぎていようと気にしない、きっとずっと1日が続くと思っている。
泥んこになって擦り傷いっぱいになって、そして気まぐれな夕立に降られてびしょ濡れになっても、
それでも自分で一生懸命とったクワガタさえいれば満足。
この後もしかしたら、泥んこずぶ濡れで帰れば、お母さんに怒られるかもしれないけれど、へっちゃ
ら。クワガタさえいれば、最強になった気分。
そんな純粋で真っ直ぐで一生懸命だった夏の日。夏の日のちょっとした大冒険。
この絵本は、鮮やかな色合いとわかりやすくシンプルな文章で、お子さんに読み聞かせるのにぴ
ったりなのはもちろんですが、幼い日の思いをまざまざと蘇らせてくれる本なので、子供たちの気
持ちに戻るために、大人にこそ読んで欲しい本かもしれません。
そして、何度も何度も、どうしても捕まらない、手ごわいクワガタ。
でも、諦めない。
何度も何度も挑戦する。
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