

おすすめ絵本
「はじめてのおつかい」
筒井 頼子 さく 林 明子 え
あるひ、ままが いいました。
「みいちゃん、ひとりで おつかい できるかしら」
「ひとりで!」
5歳のみいちゃんが、はじめてママにおつかいを頼まれます。
もう5歳だし、お姉ちゃんだし、自信満々にみいちゃんは家を出て行きます。
自分が初めて一人で買い物できるようになったのはいつだったかな?と思ってみても、なかなか
思い出せないものです。
みいちゃんは5歳。
大人から見たら、まだまだ子供だけれど、みいちゃん自身は、もう5歳と思っている。
大人のできることも何だってできる、できるものだ、と思っているんだろう。
元気に家を出て行きます。
でもすぐに、自転車が横を通るだけでドキドキ不安になったり、
お友達に出会って、少し勇気が出てきたり、
でも、転んでお金を落としてしまって焦ったり。
些細な出来事に敏感に反応して、初めての一人だけのおつかいはドキドキワクワク、外の世界は
子供にとってこんなに冒険なんだと伝わってきます。
そして、目指すお店に到着し、一息つけるのかと思えば、ここでも試練が待ち受けている。
自分では大きな声を出したつもりが、とても小さな声しか出なくて、お店の人に気づいてもらえな
い。
自分では大丈夫!と思っていたことが、現実にはなかなかうまくいかない。
やっとお店の人が出てきたと思っても、みいちゃんのことに気づいてくれない。
こんな経験、あったなと思い出す。
家の中では何でも思うように行くのに、一歩外に出ると、自分で全部しなくてはいけない、誰も助
けてくれない。
とっても心細いものです。
だから、お店の人が気づいてくれて、声をかけてくれて、ついに我慢していた気持ちが溢れてしま
う。
こんなに繊細な生き物だったな、子供の頃は、と思う。
きっとお店のおばさんも、お母さんもそれはよくわかっているんだろう。
すっかり動転しておつりを忘れたみいちゃんに駆け寄って励ますおばさん、そして、坂を上らずに、
坂の下でみいちゃんを待っているお母さん。
一人でおつかいに行って、どんなにか心細かっただろうけれど、声を出せば、助けを求めればい
つだって大人たちは子供の手助けをしてくれる。待っていてくれる。
全部を引き受けるのではなくて、子供がきちんとできるように、時には寄り添い、時には離れて手
助けをしてくれるのだということ、そんな信頼をみいちゃんが感じてくれると良いなと思う。
きっとみいちゃんは、次におつかいに行った時は、もっと上手にできるようになることだろう。
そしてだんだんとはじめてのおつかいの時の気持ちも忘れていくだろうけれど、いつの日か、心細
くしている小さな子を見かけたとき、手を差し伸べられるようになれば良いなと思う。
子供が初めて外の世界に触れる、実にみずみずしい感性が見事に描かれている絵本だと思いま
す。
とても優しい絵本です。
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