桃への思い

そろそろ桃の出てくる季節である。
毎年6月になると、それを楽しみに八百屋やスーパーを覗くのが恒例となっているが、どうしたわけか今年はまだとんとお見かけしない。

去年は随分早い時期から沢山でていて、しかもそれが安めなのにかかわらず、とても美味しくて驚いた。
今まで桃はあまり食べなかったが(高いといのも合わさって)、去年の桃には、桃に対する見方を変えさせられた。

甘くてみずみずしいという月並みの表現が、月並み以上の効果を持った。
ほんとうにその通りの果物があるのか、と思い直した。
多少他の果物に比べて高くても、それだけの価値はある、ということで、安月給をおして、3日に一度は食べていたような気がする。

だから今年も非常に楽しみにしているのだが、何時出てきてくれるのだろうか。
今の心境は、毎巻買っているマンガ本の新刊発売日を心待ちにするのと同等である。

毎日八百屋の横を通るたび、横目でちらちらと果物コーナーを物色している。
あ、桃!と思うたびプラムであるのにがっかりする。

むろんプラムには何の罪もない。
けれども桃を待ちながらプラムを買うというのは、何となく代償行為のような気がするので、桃が出た後でプラムについては再検討したいと思っている。

それにしてもずいぶんと焦らされている。
去年の天候はどうであったろうか。
桃の生長によろしくない気候だったろうか。

昔のことが心配になってくる。
まるで意中の人の出方まちの恋愛気分である。

とりあえず桃が売り出されたら、一回に7個買って、贅沢に丸ごと食べるのだ。
今から楽しみである。

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